1943年生まれ。
生後10ヶ月で両親を亡くし、中学校卒業後と同時に理容の道にすすむ。1972年、埼玉県越谷市にパンダ理容室1号店を開店以来、同市を中心に年商4億円、従業員数80名の16店舗のチェーン組織をつくる。今まで、多くの問題児に対し、真正面から向かい合い立派な理容師に育て上げる。2006年11月にフジテレビで放映された「もう裏切らないでくれ〜問題児たちの再生理容室〜」での、末吉氏のスタッフに対するひたむきな姿は大きな反響を呼んだ。

昭和45年8月31日生まれ、ビューティーナビ株式会社取締役。6、7年前から美容業界にITを活用した提案を行う。現在に至るまで『ビューティーナビ』を含め、3つの美容室検索サイトの運営に携わる。業界のインターネット事情に詳しい。「美容業界をITで変える」が口癖。

- BN佐々木
- 本日は、お忙しいところ、お時間を頂きまして本当に 有難うございます。実は僕の会社のメンバーが心の病で 悩んでいて、会社に復帰出来ないという状況になって います。このような状況は決して僕等の会社だけでなく、 社会全体を見ても多く起こっている現象です。僕の中 では、心の病で悩んでいるメンバーの苦しみを少しでも 知り、何とか力になってあげたいという気持ちと、今後 そのような心が病んでしまうスタッフを二度と出したく ないという気持ちがあります。でも今はどうしたら良いか? という答えが見つからず悩み続けているだけです。今回 の対談は、マスター(末吉氏、以下マスター)と話しをさせて頂き、スタッフ に対する向きあい方を考直したいということからお願い させて頂きました。個人的な悩みからの対談ということで 本当に申し訳ないのですが、この対談を通じて、心の病 で悩んでいるメンバーのいる経営者、管理者の方、 そして心の病で悩んでいる方に対して、 何か伝われば幸いだと思います。
- 末吉氏
- 僕のところでも、入社する前から対人恐怖症という病を もった18歳の女の子がいます。実はその子については、 最初から承知して受け入れました。その子は小学校6年生 から対人恐怖症になってしまい、中学校はほとんど行って いない子でした。でも今はパンダで凄く頑張っていますよ。 他にも一人いましたが、今は完全に治り店長をしています。 でも心の病が治るのに3年間かかりましたね。
- BN佐々木
- その店長になった方とは、心の病だった3年の間も色々と 会話をされたのですよね。
- 末吉氏
- そうですね、会話はしましたね。あと、休みたい時には、仕事を休ませてあげたりしましたね。だいたい心の病になる人の共通する点は、胸が苦しくなったり、頭が重くなったり、吐き気がしたり、という症状が出てきます。あと、トイレに行っても用を足さないのに、何回もちょくちょくとトイレに駆け込んだりします。そのような人を見かけると、心の病になっているというのが分かります。
- BN佐々木
- 理容師さんの仕事は、非常に近い距離でお客様と接しますよね?そうなると、人と接するという部分では、仕事を続けるのは無理なのではないかと思ってしまうのですが。
- 末吉氏
- そうですね、でも、僕は治る病気だということを前提 に考えて接しています。その上で仕事を本人のペース で任せていれば、そんなにひどくはならないのかなと 思います。
- BN佐々木
- そのような時でも、スタッフを救ってあげたいという気持ちは強く持たれているのですか?
- 末吉氏
- そうですね、心の病は現代病として認められていますからね。僕も今までスタッフの中に(心の病を持った子が)何人も何人もいたので、心の病についての資料を読み勉強しました。今は脳の伝達器官やホルモンバランスが崩れ心の病になるなど言われていますが、まさか脳の病気ではないと思います。昔は「心が風邪引いた」とも言いました。仕事の中では、平社員の方が役職についた途端、プレッシャーに潰されて(心の病に)なるというパターンが多いです。逆の場合もありますが、喜びにしろ、悲しみにしろ、ショックを感じる度合いだと思います。僕等(理容師という仕事)のところで心の病になるのは、お客様のクレームに対しての辛さであったり、プレッシャーからくる場合が多いのかなと感じています。
頑張りすぎて、つらくなることもある、、、
- BN佐々木
- 僕が凄く悩んでいるのが、そのようなスタッフを助けてあげたいという気持ちは強いのですが、あまり助けてあげようと気持ちを伝えてしまうと返ってプレッシャーになるかもしれませんし、でも声を掛けてあげないと見捨られたように感じてしまうのではないかと思ってしまいます。正直言うと、どのように接してあげれば良いのか分からないですし、何をして良いのか分かりません。マスターは、そのような心が病んでいるスタッフと、どのように接しているのですか?
- 末吉氏
- 僕も含めて周りの人達は普通に接します。もちろん、病んでいる度合いにもよりますがね。人と話しが出来ない、会うことが出来ないという場合は、また違った対応になると思いますが、心は病んでいるけど仕事はしているという場合は、僕がスタッフを病院に連れていって、一緒に先生のお話をよく聞き、その上で、一緒にどのようにしていくかを考えていきます。やっぱり、心が病んでいるとはいえ、収入の問題もあり働かなければいけない状況の場合が多いので、そこも最低限考えてあげて、このくらい休ませてあげてというところまではしますね。僕の場合は、自宅に完全こもった状況にはさせないんです。
- BN佐々木
- 実際、心が病んでしまったスタッフに対して、どのような言葉をかけているのですか?
- 末吉氏
- ほとんど普通なんですが、病院の先生方に言われているのが『頑張れよ!』とかの励ましの言葉はやめて下さいと言われていますので、そのような激励の言葉を掛けるのはしません。本人は頑張り過ぎてこのような結果になってしまうのだから、励ましの言葉だけはかけないでと、どこの病院に行っても言われます。心の病になるタイプの人は、もの凄く真面目な方が多いから、強いてこちらから頑張れとか言わなくても、やれば頑張ろうとしているんですよね。
- BN佐々木
- 僕のメンバーも本当に、凄く頑張っていた子でした。凄く頑張っていた子だからこそ、信じられなくてショックでしたが、頑張り過ぎるとそうなってしまう場合もあるのですね。テレビ(2006年11月に放映されたパンダ理容室の特集番組)を見させていただいて、寮に閉じこもったまま仕事に出られないスタッフがいましたよね?そのスタッフの方は、頑張り過ぎてというよりは気力がないという感じでしたが、マスターはそのスタッフの寮の部屋に行って、隣に布団を敷いて泊り込みをしていましたよね。その時に、どのようなお話をしていたのですか?
- 末吉氏
- そのスタッフは、働いては脱走しての繰り返しで、何度も投げ出してしまう子でした。一緒に寝泊りしたときは、難しい仕事の話は一切しなかったですね。でもね、僕が部屋に来て、布団を持ち込んで泊まりに来くるということだけで、本人は相当ショックを感じると思います。そこに仕事の話を持ってきて、上乗せしてどんなに話をしても、多分、返事はしてくれるとは思いますが、話しのほとんどは、右から左へ抜けると思うんですよ。僕が隣で寝泊りするというだけで、相当ショックなことですから、本人は十分感じると思います。
- BN佐々木
- テレビや本を拝見させて頂いていると、マスターは悩んでいるスタッフに対して、もの凄く時間をかけているじゃないですか。例えば、悩んでいるスタッフよりも、今、頑張って働いているスタッフを大事にしなければいけないという考えもあります。パンダ理容室の場合は、“悩んでいるスタッフがいたら助ける”ということが文化として出来上がっているという気がしました。その“助け合う文化”をつくることは、言葉でいうのは簡単ですが、実際につくるのは本当に難しいと思います。助け合いの精神が、全てのスタッフに浸透しているパンダ理容室は本当に凄いなと思います。
- 末吉氏
- パンダでは、高校を出てみんなで寮生活を行ないますので、自然に助け合っているのだと思います。その辺(助け合うということ)は出来ていますね。
- BN佐々木
- うちの会社もそうですが、一般企業で寮生活が出来ない環境の場合は、どのように助け合う文化を創りあげていけば良いのでしょうか?
- 末吉氏
一般企業だと難しいかもしれませんね。元気ないな〜って感じた子に『今日帰りに飲み行くか?』と言っても、最近の若い人達は自分の時間が‥というようになりますしね。寮生活だと仕事が終わった後の生活も一緒になりますから・・・それを考えると、一般企業の人達同士が、仕事に関係ない時間を費やすかと言ったら難しいですよね。でも、僕がいつもスタッフに、“志”を持ちなさいと言っているのですが、パンダのスタッフの場合は、自分のお店を持つという“志”を皆持っています。一般の企業でも“志”が一緒のスタッフが集まれば、自然に助け合ったり、一緒に頑張っていけるのではないでしょうか。
- BN佐々木
- 今、僕の会社では、『祝福する文化』『助け合う文化』『責任を持つ文化』という3つの文化を創りたいということを掲げています。精神的に病んでしまったメンバーを出してしまったのがきっかけで、そのようなテーマを掲げました。そこにいるメンバーの誰もが幸せになれる環境をつくりたいということが一番の目的です。その中でも、『助け合う文化』というのは難しいなと感じています。一人一人は助け合うという優しい気持ちを持っていても、なかなか行動に出せないのです。この助け合うということを反射的に出せれば、凄く良い会社になるのではないかなと思います。
- 末吉氏
- 僕達の場合は、高校を卒業して、まだ社会人の自覚もない状況の人達が、みんなで寮生活をするじゃないですか。最初に何をするかと言うと、道徳教育みたいなことを相当します。まずは、最初はそこから入るわけですよ。例えば、お酒を飲み過ぎて道路に倒れている人がいるとします。もしかしたら、歩いていて急にお腹が痛くなって、道路にうずくまっているのかもしれないけれど、多分、通りすがりのほとんどの人が『何だ、この酔っ払い!』と思って放っておくと思います。でも、少なくともパンダの誰かは、それを見たら例え飲み過ぎで倒れていると分かったとしても、『大丈夫ですか?』と声を掛けるように教えています。もし、本当にお腹が痛くて倒れていたら、救急車を呼んで病院までついて行くように教えています。
スタッフの悩みを解決していく喜び
- BN佐々木
- マスターがそのようなお考え(助け合いの精神)をお持ちなので、店長さんやスタッフさんに自然に浸透していくんですね。でも、助け合いの精神を持っていても、自分の身を削ってまでスタッフを助けるということを続けていると、正直、疲れたりしないのですか?
- 末吉氏
- これはよく聞かれたりするのですが、ストレスを感じる前にどうにか解決しなければいけないという気力の方が先にくるからでしょうね。多分、解決出来ない方がストレスになるのかなと思います。
- BN佐々木
- あと、凄く辛抱強いなということもいつも感じます
- 末吉氏
- これもね、よく言われます。多分、スタッフの悩みを考えて解決していく喜びの方が大きいと思います。
- BN佐々木
- スタッフの喜ぶ顔が見たいということですよね。僕も、前回の対談でマスターと話をさせてもらい、マスターのような人になりたいと思ったのですが、やはり自分の中で葛藤があって、『自分は神様じゃないから無理だ』なんて思ったり、でも『やらなければいけない』とか、そんなことを思いながらメンバーと向き合っていたのですが、マスターの中にはそのような葛藤は全くないのでしょうか?
- 末吉氏
- いや、無いでしょうね。でも、どうしても波長の合わない人間性というか人柄はいますよ。その子に合わせて何十段も下がる。けれども、何も言葉にも感動してくれないし、行動にも感動してくれない。このような価値観が全然違う人と出会うと頭を抱えることもありますよ。
- BN佐々木
- そんな時は、もしかしたらマスターにとっては大変かもしれませんが、マスターみたいな方でもそういう時もあるんだなと少しホッとします。
- 末吉氏
- でも、これがまた上手く出来ていて、僕はその子と相性が合わないのだけれども、他の店長とは相性が良かったりというのもあります。そのよう時は相性の良い店長に任せます。本当に上手く出来ているんだなぁと思います。
最後まで絶対に見捨てない!厳しい愛情!
- BN佐々木
- いつもマスターは、スタッフを見限らないと言っておりますが、その中には他のスタッフに迷惑を掛けたり、傷つけてしまうスタッフもいると思うんです。そのようなスタッフも見限らないで接するのですか?
- 末吉氏
- もちろん、そうですね。
- BN佐々木
- そのようなスタッフに対しても、周りのスタッフが『助ける文化』というのはあるのですか?
- 末吉氏
- そうですね。そのように問題のある子は、店長を中心にそれはよく面倒は見ますね。例えば、他のスタッフ名義でお金を借りたスタッフの場合は、店長達が給料を貰うと貯金通帳から小遣いまで全部管理して、借金をしないくせをつくるところから徹底的に面倒を見ています。
- BN佐々木
- 仲間に迷惑を掛けたスタッフに対しても、店長を筆頭に助けてあげてたいという気持ちは消えないんですね。それはマスターから店長に対して『○○を頼むよ』という指示をしているのですか?
- 末吉氏
- それは無いですね。全て店長自らしていることなんですね。多少はそのスタッフに罰を与えたりはしますが。例えば、田舎に帰らしたりしていますね。
- BN佐々木
- 問題のあるスタッフには、共通する子供時代の過ごし方というのはあるのでしょうか?
- 末吉氏
- いや、これは無いと思いますよ。そういうものがあったとしたら、僕は4人兄弟で両親が居なくて、皆、親戚をまわってバラバラに育ちました。普通だったら、一人くらい脱落して悪さする奴らが出てもいいんじゃないかと親戚からも言われるのですが、これが4人とも真面目に育ち会社を経営したりで一人も脱落していないんです。だから環境の背景はあまり関係ないとは思いますね。
- BN佐々木
- マスターの『絶対に見限らない』という姿勢は、ときには、『すごく甘くて優しい』というように感じられる場合もあるかもしれません。その一方で、家族よりもマスターが厳しく愛情を持って接するからこそ、スタッフに伝わっていくのだと思いました。やはり、愛情を与える続けることによって人は変わっていくのですね。
- 末吉氏
いや、僕の愛情は厳しいですよ。最後まで絶対に見捨てないということは、逃げ道がないということになりますから。最近は、両親の愛情の中に厳しさが足りないと思います。というのは、僕の愛情はスタッフが何をしても絶対見捨てないで最後まで付き合うというわけです。でも、両親の愛情はどこかで『勝手にしろ!』と見捨ててしまうんですよ。そうなると、子供の世界ではその次にどこに行くかと言ったら、自由という意味を間違えて引きこもりをしてしまい、親が御飯だけ運んで置くというケースがあったりするのです。結局、親がどこかで見捨ててしまうんですよ。どうしよう!どうしよう!うちの子が‥という不安を装っているだけ、心配しているふりだけなんですよね。
- BN佐々木
- 特集番組の中での仕事に行かなかったスタッフも、マスターの体を張った行動で立ち直りました。あと、特集番組を見て感じたのが、マスターがスタッフとその家族の接点を深く繋いでいる役割をしているように思いましたが、マスターの中で、スタッフを家族愛に目覚めさせて、立ち直らせようということを意識的にしているということはあるのでしょうか?
- 末吉氏
- それはないですね。消費者金融に手を出した子(特集番組の中で何度も借金を繰り返していたスタッフ)っているでしょ?ああいう子達って頭の回転がもの凄く速いから、化けるとするとこのタイプの子はクルっと化けて良くなったりするんですよ。逆に無気力の体質の子は、例えば会社のルールや就業規則を守るということは弱いけど、全く人様には迷惑はかけない子なんですよね。決して暴力的になったりとかはないんです。何れにせよ、本人達が化けることを信じて、根気良く接していかなければいけないと思います。
- BN佐々木
- 今、社会全体でメンタル面で悩んでいる方が凄く多いですよね。そのような人を出さない環境づくりも重要ですが、一人一人の精神教育も重要になってくると思います。
- 末吉氏
- パンダは寮生活ですから、スタッフ全員一緒にテレビを見させますよ。そしてその見たテレビの感想文を必ず書かせて持ってきなさいと言います。このような道徳教育をさせます。
- BN佐々木
- 僕も様々な尊敬する美容師のオーナーさんのお話をしたり、マスターの話も掲載されたことのある『致知』という雑誌の一部分をコピーして配布したりして、自分の言葉で語ったりしてはいますが、今の自分達の環境が本当に恵まれていますからね。例えば、生と死について書かれたものについて語ったとしてもピンとこない場合が多い。だから、伝え続けていかなければならないと思います。自分も含めて一緒に学んでいかないといけないと思っております。
- 末吉氏
- そうですね、時代背景が全然違いますからね。今、社会に出ている方のご両親は、バブル期を経験した人達が多いから、自分自身が贅沢して育った環境だったから、価値観の基準がものすごく高いのです。だから、そこに『そんな甘いもんじゃないんだよ』と厳しい事を言ってもなかなか伝わらないですね。
なんとか結果を出させてあげる。 結果を出させてあげることが成長につながる。
- BN佐々木
- 今まで厳しい環境におかれたことのない人の場合、厳しい環境になると凄くストレスを感じてしまうと思います。徐々にその厳しさを教えていかないといけないとは思いますが、マスターは厳しさを教えるという点では、どのようなことを伝えているのですか?
- 末吉氏
- 僕達の仕事は、厳しさを知るという面ではとても良い職業で、自分が頑張れば頑張った分、お客様という厳しい目を持った方を通じて結果が出てくるのです。頑張ればシャンプーで褒められたり、カットで褒められたりして、どんどん目の前に結果として現れるから、頑張りと厳しさに対しては結果としてハッキリでます。
- BN佐々木
- その厳しさをしっかりと認識させるというのは重要ですよね。
- 末吉氏
- そうですね、皆同時入社して、この子はシャンプーが出来てきたなどハッキリ結果として出てきます。そしたら、次の技術を学んでどんどん成長していくことが出来る。もちろん、まだ出来ない子は我慢して、今、やっていることで結果を出すことに頑張ります。
- BN佐々木
- パンダ理容室のスタッフで『自分は店長になって独立したいんだ』という夢を持っている方の割合はどのくらいでしょうか?
- 末吉氏
- もう、うちは100パーセント皆、独立型です。
- BN佐々木
- そうなると、人よりも早く店長にならないといけないとかはありますか?
- 末吉氏
- それはないです。10年経ったら僕の方から『いいよ』と声掛けます。それは皆、分かっていることだから店長になるための競争みたいのはないです。ただ一時的に競争心はありますね。
- BN佐々木
- そうすると、競争心がない企業は成長しないと言われることが多いじゃないですか。パンダ理容室の中では全く違うんですね。
- 末吉氏
- それは違いますね。「競争」とかこれが難しいですよ。最初に入社してきて、最初の日に必ず黒板に書くことがありまして成長しないことは恥なんだよということを教えます。今月よりも来月、今年よりも来年、と成長しないのが立派な恥じなんだよ、ということを教えます。自分自身のケジメとして成長しなさいということが教えだから、給料も同期という名がつけば、全員評価は同じです。
- BN佐々木
- 話が戻りますが、助け合う精神を養う、お互いに愛情を持って接するということは、幼いときからの教育も重要だと思いますが、幼少時期に重要なことって何だと思いますか?
- 末吉氏
先ず、個室をつくらないことですよ。子供部屋をつくってしまうと良くないんですよ。子供部屋がなかったら家族皆が一つの所に自然と集まるでしょ。それが小さい頃から子供部屋をつくるから感情のコントロールが出来なくなったり我慢が出来なくなったりするのです。自分が気に入らないことが起こると、すぐに部屋に閉じこもるでしょ。家族の輪の中だったら、気に入らないことがあってグズグズと言っていたら『いつまで言っているんだ!』と叱られるでしょ。そこで兄弟愛も出てくることでしょう。今は一人二人しかいないお子様に小さい頃から子供部屋を与える場合も多いと思いますが、どこで家族団欒の場をつくるべきだと思います。
- BN佐々木
- 家族の団欒の場をつくるということが大切なんですね。 家族団欒の場が団体生活の始まりかもしれませんね。
- 末吉氏
- あと、親の他人任せは良くないと言いたいですね。 親が真剣に子供のことを考えないと,今後も心の病は増えると思います。
- BN佐々木
- 家族の接し方は、お子さんを持つ方にとって、とても参考になるお話だと思います。僕もそうですが、家族以外の人で何か出来ることはあるのでしょうか?何とかしてあげたいのですが、何もしてあげれないもどかしさがあります。
- 末吉氏
- まずは、一緒に病院に行ってあげることでしょう。僕もそのようなスタッフと一緒に病院に行きます。お医者さんの言うとおりに接してあげるのが一番良いかと思います。気力が失せて、なかなか外に出れない人は、あることをきっかけにして引っ張り出してあげることもしますが、頑張り過ぎて鬱の状態になった人であれば、今まで一生懸命、全力疾走で頑張ってきたのに、更に『頑張れ!』と言ってしまうと心臓がパンクしてしまいます。先ずは、そこを見極めないと何もできないでしょうね。
- BN佐々木
- 鬱の状態になる前に見極める必要があるかと思いますが、 どのようなところを見て判断するのでしょうか?
- 末吉氏
- 先ず見るのは、その子の表情と声のトーンの高さでしょうね。これは元気かそうでないかを一番判断出来るところです。若い人達はもの凄くストレートなんですよね。僕の言葉で言うと、『皮膚で見る』です。気持ちが沈んでいる時は皮膚もどんよりしているいるし、心がハツラツしている時は皮膚も輝いているわけです。後はトイレの回数だいたいそこで判断します。
- BN佐々木
- 鬱の兆候を感じた場合、先ずは病院に行ったほうが良いとのことですが、病院に行って返って自分は鬱なのだと認識して落ち込んでしまうケースもあるのではないでしょうか。
- 末吉氏
- いや、病院に連れて行くべきです。何もしないで治るということは、まずないです。そのままにしておくと、本人が凄く辛くなる一方です。本人が病院に行かないケースでも、心が疲れているわけですから、一週間程寝かしてあげるべきです。
- BN佐々木
- 精神と体は繋がっているとよく言われますが、心が病んでいるのか体が病んでいるのか分からない場合もあると思うのですが、その時はどのように見分ければよいのでしょうか?
- 末吉氏
- 心が病み始めた方のほとんどが、体に異常があるのではないかと思って色々な内科の病院を回り検査を何度も繰り返します。結局は肉体的には何ともないのが分かります。でも、本人からすると眠れなかったり、体重が減ったりと体に支障があると思っているのですが、精神的に病んでしまっている場合が多く、その場合は早く気付かせてあげることが重要です。最初に診察した先生が(精神的な病気の)知識があれば本人にとっても幸せです。昔だったら精神病と言われると、もの凄く抵抗があったかもしれませんが、今は現代病として多くの人が悩んでいますので、先ずは病院に行って相談してみるべきだと思います。
- BN佐々木
- そうですか。僕は全く気付いてあげることが出来なかったですね。あらかじめ、そのような知識を持っていればもっと早く対処出来たかもしれません。大事なメンバーを傷つけないためにも、自分自身もっと勉強する必要があると思います。ただ、ただ反省するばかりです。
- 末吉氏
- 自己評価の強い人と、他人評価の強い人にタイプが別れますが、他人評価の強い人程、『こんなに頑張っているのに!』という気持ちが強くなり、さらに頑張ってしまう傾向があります。
- BN佐々木
- 頑張るということは、度合いが過ぎるといけない場合もあるのですね。僕は、そんな時も『頑張れ!』と激励してたかもしれません。もっとメンバーの深い部分を知ろうという気持ちを持ちたいと思います。マスターは元気のないとスタッフを判断した時は、その場で声かけてあげるのでしょうか?
- 末吉氏
- いや、その時は声を掛けませんが、皆、寮生活なので『今日部屋行くよ』と声掛けて、仕事が終わった後に部屋に行ってゴロンとしてしまいますね(笑)。そして雑談をしながら、少しでも本音や、悩みが出てきたら喰らいつきますね。ただ、ほとんど雑談で終わってしまう場合が多いですけど。
- BN佐々木
- 会話とコミュニケーションを続けることが重要なんですね。スタッフを見る時にハラハラして見ているのか心配しながら見ているのか、ほのぼのした気持ちで見ているのかそこも知りたいです。
- 末吉氏
- スタッフの時期により、もちろんハラハラしながら見ているときもありますが、僕自身のその時の年齢によって見方が変わっていくような気がします。今は、ほのぼのした気持ちで見ています。今は『若い時は色々とあるよな〜』のような感覚で見ています。
やり残したことは、まったくありません。
- BN佐々木
- マスターは現在64歳で、今まで本当に色々な苦労があったと思いますが、自分がしっかりしないと皆が崩れてしまうとか、自分がしっかりしないとダメだとか、義務感のような気持ちに陥ったことはありますか?
- 末吉氏
- やっぱり30代はそうでした。極端に言うと鬼のような性格で、俺に黙ってついてこいタイプでした。
- BN佐々木
- その時は、スタッフの方はついてきたのですか?
- 末吉氏
- そうですね、それも時代の背景がありますからね。
- BN佐々木
- マスターは、息子さんよりもスタッフの方が関わりが深いということが本でも書いてありましたが、先日のテレビの中では、息子さんに小さい時から凄く多くの手紙を送っていましたよね。息子さんは、その手紙を全て大事にとっておいていました。その場面を見てすごく感動したのですが、スタッフの方も家族とはいえ、息子さんに対しては、それ以上の愛情を与えていたのだなと思いました。
- 末吉氏
- 手紙は子供の時からの習慣付けなんですよ。僕は、ほとんど家に居なくて、家に帰るのは夜中1時から2時だったから子供と接する日がありませんでした。子供と女房とコミュニケーションを取る為に文通や交換日記のやりとりをしていましたね。今までの文通の手紙などは、全てとってあります。女房との交換日記は20年間続いていました。30代から50代まで毎日ですね。子供達は月に1回程度で小学校入学してから文通するようになりました。
- BN佐々木
- 息子さんがその手紙を大事に持ってたのは、以前から知っていたのですか?
- 末吉氏
- いや、それはテレビを見て初めて知りました。(笑)
- BN佐々木
- 今まで、失礼ながら父親としてのマスターのイメージはあまりなかったのですが、父親として子供にもスタッフ以上の深い愛情を注いでいるマスターにとても感動しました。マスターは今年で引退されるとのことですが、さみしいとか、やり残したという気持ちはありますか?
- 末吉氏
- 全くありません。やり残したこともないです。さみしいという気持ちもこの年齢ですからね・・・15歳から働いていて50年間働いているからもういいだろうという気持ちです。(笑) 僕自身はないですけど、スタッフ自身ががものすごくあるみたいですよ。あるスタッフはマスターに可愛がってもらいたかったら、問題を起こせば部屋に来てくれるとか冗談っぽく言ってたみたいですが・・・
- BN佐々木
- 全くないと言い切れるのは凄いです。マスターのような悔いのない人生を送れるようになりたいです。僕には計り知れない多くの体験をされての言葉だと思います。本当にお疲れ様でした。でも、確かにスタッフからすると寂しいかもしれません・・・
- BN佐々木
- マスターとお話をしていていつも印象的なのが、すごく温かさは感じるのですが常に感情が一定だということです。例えば、テレビ番組の中で、スタッフのお父さんが長年の鬱病で悩んでいたり、支えになったお婆ちゃんが亡くなってしまったりなど、感情が大きく動いてもいいような場面が多くありまりたが、マスターは一貫して穏やかな表情でいます。スタッフが落ち込んだ時は同情したり、誰かが亡くなったときは猛烈に悲しんだりする。そのようなことが表に出ないのは、どんな出来事も受け入れるスタンスがあるのかなと思いましたが・・
- 末吉氏
- 受け入れるとかではなくて、凄く悲しむということがないのです。ない、と言うと語弊があるかもしれませんが、僕の中では『死んでから涙を流しても間に合わない』という考え方なんです。『死んでから涙流さない、何もしない、その代わり、元気に出会っている時は悔いのないように精一杯出来ることをする』という考えです。だから死に対しては素直に喜んで受け入れることです。
- BN佐々木
- 相手が元気なうちに精一杯出来ることをする。その時々で出来ることをするということですね。
- BN佐々木
- 今は本屋さんとかに行くと成功本とかが出ていますが、マスターの中で人生の目標設定というのはあるのでしょうか?
- 末吉氏
- これもないんですよね。普通だったら夢を持って、計画を作って実行してというのは分かっているのですが、これもほとんどゼロなんですよ。ゼロなのに何で16店舗もの床屋を出したのかと聞かれると、やっぱりスタッフが独立する社会に出たのだけれども、この職業に出会って独立するのが嫌だという人たちにも出会うんですよ。その人たちの資金的な面もありますし、性格的な部分もありますし。その人たちの職業の場を持たせてあげているだけなんです。そのような子達に出会わなければ、今の店舗数もなかったのかもしれません。
- BN佐々木
- 出会いを大切にした結果、様々な考えのスタッフと出会い、そのスタッフのためと考えた結果が店舗展開となったわけですね
- 末吉氏
- スタッフの中には色々大変な思いをした子もいますが、僕達がボランティアで定期的に訪問している養護施設の状況は本当に酷い。僕等が行っている施設は0歳〜18歳の子供達がいます。全国でいうと約32,000人の子達が施設に入っているはずです。僕達の時代だと、戦争で親を亡くした戦争孤児という子達がいましたが、今の施設に入っている子達の約9割が親がいます。そして、約6割の子達が親から虐待を受けたことがあるという本当に酷い状況です。本当に人間愛が必要なのはこの子達なのかもしれないと思うんです。この3万数千という数も、把握されている数なので氷山の一角だと思います。
将来がある子達のこれからを、もっとみてあげなくてはいけない。
- BN佐々木
- 虐待されても、やはりお母さんはお母さん、お父さんはお父さんなのでしょうか?
- 末吉氏
- 年に一回、施設で親を呼んで、焼きそばをつくったりする子供と触れ合うイベントを行なうのですが、虐待されていてもお母さん、お父さんにしがみ付いて離れないんですよ。この血の繋がりはどうにも出来ないのでしょうね。
- BN佐々木
- その中でも強く生きている子供達もたくさんいるのでしょうか?
- 末吉氏
- 世の中が差別しているとまでは言わないですが、社会に溶け込んでいる子はあまりいないのが現状です。施設では、10人に対して2人の先生がついてますが、大学を卒業したばかりであったり若い先生だと、やはり子育ての経験がないため問題を持った子供達とうまく接することが出来ないんです。僕も提案させて頂いているのですが、これだけ高齢化社会になったのだから、子育ての経験豊富な高齢者の方々に子供達を任せればいいと思うんです。でも、そこには法律の壁が立ちはだかりそうもいかない。結果的には、社会に出ても正しい道を歩むことが出来なかったり、風俗店に勤めたりしてしまうケースが多いんです。施設を出た子の9割は連絡が取れなくなってしまいます。やはり、社会に出てのギャップを感じるんでしょうね。自分達の常識と、社会の常識があまりにもずれてしまって付いていけなくなってしまうんでしょうね。ある子から聞いたのですが、『普通の考えになるまでに10年かかりました』と言っていました。それだけ、ギャップがあるということです。
- BN佐々木
- 親に虐待されたのが始まりで、人生を狂わしてしまうということを聞くと、 本当にやり切れなくなります。
- 末吉氏
- 高齢化社会で確かに高齢者の方を大事にすることも重要ですが、これからの将来がある子達を本当はもっと見てあげなくてはいけないと思うんです。この現実を是非みて欲しいと思います。この子達には本当はこれからの将来があるんです。
- BN佐々木
- そのような話を聞くと、僕の悩んでいたことが小さく感じてきます。どうにもならない環境を受け入れない人もいるのだと・・・でも、実際に心の病で悩んでいる人はたくさんいますので、この対談を何かのきっかけにして、一歩踏み出してもらえれば幸いです。本日は貴重なお話を頂きまして本当に有難うございました。引退後もお体に気をつけて下さい。
>> パンダ理容末吉氏×ビューティーナビ佐々木亮輔対談Vol.1『スタッフと共に生きる編』を見る
【掲載日:2008年1月18日】













